初心者向け! 家飲みビールを楽しむための基礎知識② ビアスタイル編⑴

ビアスタイル

 お疲れ様です!! 家飲み!ビアホールです。前回に引き続き、「ビールは大好きだけど、どれを飲んでも大した違いがわからない」という方向けに、お手軽に手に入るビールを、もっともっと楽しむための基礎知識をお話ししていきたいと思います。

 今回は「ビアスタイル」についてです。ひとくちに「ビアスタイル」といっても、様々な分け方がある上に、近年のクラフトビールブームで増え続ける個性的なビールのおかげで、スタイルも細分化され続けていて、もう、何が何だかわかりません(笑)。

 ただ奥深いビールの世界を、より深く楽しみ、記憶にとどめておくには、スタイルへの理解が切っても切れないのも事実です。

 世界的なビアコンテストでは100種類以上のスタイル分けがされており、ビール上級者の方にとっては語り始めればキリがないことと思いますが、このシリーズでは「ビアスタイル」という言葉を初めて聞いた、という方もいることを前提に、新しいビールにチャレンジしてみたくなるようなスタイル分けのお話をしていきたいと思います。

とりあえず色々なスタイルのビールを飲んでみよう

「ラガー」と「エール」

 ビールがお好きな方なら「ラガー」や「エール」という言葉は聞いたことがあると思います。

 「ラガー」なら、 ”キリンラガー” や ”サッポロラガー(赤星ラガー)” 、「エール」ならプレモルシリーズの”香るエール”やエビスシリーズの”プレミアムエール”という商品名でお馴染みですが、言葉の意味を聞かれると、意外と答えられない方が多いんですね。

 では「ラガー」「エール」とは何かというと、ビールの製造過程でアルコール発酵させる際に使用する「酵母の種類」になります。

 大手のビールメーカーでは、それこそ何百・何千種類もの酵母をストックしていて、ビールのスタイルによって使い分けているとのことですが、人工的に加える酵母は、大きく「ラガー酵母(下面醗酵酵母)」と「エール酵母(上面発酵酵母)」の2種類に分別されます。

 その他にも、昔ながらの製法で、空気中に漂っている野生酵母に依存する自然発酵ビールというものも存在しますが、スーパーやコンビニの店頭に並ぶことはほぼないビールなので、今回はこれ以上触れないことにしますね。

 現在、世界中で飲まれているビアスタイルの大もとの発祥は、ほとんどがドイツ・イギリス・ベルギーになり、この3か国発祥のビアスタイルが頭に入っていれば、日本のメーカーが出すビールをもっと楽しめるようになるかと思います。

 日本のメーカーが出す範囲内のビアスタイルを、酵母の種類で分別した場合、ざっくりと以下のようになります。

 日本のビールを楽しむためには、これくらいのスタイルを知っていれば十分でしょう。

 あと、”アメリカン・ラガー” や ”アメリカン・IPA” のように、”アメリカン~” というスタイルも日本のクラフトビールではよく見かけますが、そのあたりは近年のアメリカでのクラフトビールブームで生まれた派生形だと思ってもらえれば大丈夫です。

 とにかく、ビールといえば大きく分けて「ラガー」と「エール」の2種類があるんだ、ということを知っていただければ、色々なビールを楽しむ入り口になるかと思います。

エールこそビールの源流

 さて、「ラガー」と「エール」の違いをお話したところで、あなたにとっての美味しいビールとはどのようなビールでしょうか。

 たいていの日本のビール好きであれば、「キンキンに冷えた」「のどごしの良い」「すっきりキレ味の良い」ビールが、うまいビールだと答えるのではないでしょうか。

 実はコレ、すべて「ラガー」の、しかもその中の ”ピルスナー” スタイルの特徴なんです。

 詳しくは次回以降にお話しますが、ビール5000年以上の歴史の中で、”ピルスナー” が誕生したのは、わずか180年ほど前ラガー酵母が使われ出したのですら、わずか600年ほど前のことで、ビールの歴史でいえば「エール」の方が圧倒的に長いんです。

 ただ、 ”ピルスナー” が誕生し、「ラガー」が世界的なブームとなって市場を席捲していたちょうどその時期日本にビール文化が入ってきたことが、運命の別れ道でした。

 ビール文化が到来した明治初期でこそ、日本でも「エール」も造られてはいましたが、日本の気候・食生活には「ラガー」がマッチしたこと、「ラガー」発祥の地であるドイツから率先して学問・文化を取り入れたこと、黄金色に輝く ”ピルスナー” スタイルのビールが世界的な大流行となっていたこと、などによって、日本のビールは、ほぼ ”ピルスナー” 一択にしぼられていきます

 戦後の高度経済成長期、冷蔵庫の普及により急速にビールの消費量があがり、日本中の家庭にビール文化が浸透していく中で、大手ビールメーカー各社は ”ピルスナー” の枠内で、しのぎを削り合います。

 宣伝文句や見た目のデザインこそ多種多様になった日本のビールでしたが、1994年の法改正によって地ビールが解禁になるまで、”ピルスナー以外のビール には、居場所がないも同然でした。

 地ビール解禁で、ようやく陽の目を見たかにみえた ”ピルスナー以外のビール” たちでしたが、広告宣伝も含めたノウハウに蓄積がない新興メーカーの造るビールが、大手ビールに太刀打ちできるわけもなく、悲しいかな2002年頃には地ビールブームは終息を迎えることとなります。

 それ以降、地ビールクラフトビールと名を変えて2度目のブームをおこす2010年代まで、 ”ピルスナー以外のビール は、再び日陰者となるのでした。

 「ビールは大好きだけど、どれを飲んでも大した違いがわからない」って、あたり前ですよね。
 だって、日本のビールはほとんどが ”ピルスナー” だったわけですから、よっぽど味に敏感でなければ大した違いを感じないのも当然です。しかも、キンキンに冷やして飲むんだから、なおのことわかりません(笑)。

 

エールに慣れよう

 キンキンに冷やして飲むのが美味しい ”ピルスナー” に慣れた方には、少し抵抗があるかもしれませんが、「エール」を美味しく飲むには、基本 ”冷やさない” ことです。

 「ラガー」よりも香りが豊かで、味も濃厚なものが多い「エール」ですが、あじわいを最大限に感じるには、常温に近い温度が最適なんです。

 とはいっても「エール」の中でもスタイルによって、それぞれに適温があり、季節にもよるので、結局は個人的な好みの温度帯で飲むのが一番ですよね。

 まずは ”習うより慣れよ” で「エール」を飲んでみましょう。


 今回おススメするのは「ヤッホーブルーイング」。

 日本のクラフトビールメーカーでは最も有名で、主力商品 ”よなよなエール” や “インドの青鬼” などは、スーパーやコンビニで見かけたことがあるのではないでしょうか。

 「ヤッホーブルーイング」の面白いところは、

  • エールに特化している
  • キリンと提携しており、スーパーやコンビニで流通している
  • ネーミングがユニーク
  • ファンを大切にし、ファンが楽しめる企画が盛りだくさん
  • ホームページが充実していて、各ビールの飲み方なども詳しく知ることができる

 などなどです。

 私も「ヤッホーブルーイング」のビールが大好きで、好きが高じてビール缶を3DCGで作成してしまったほどです(以下の画像)。

 「ヤッホーブルーイング」のビールは、「エール」を試してみるにはもってこいで、各スタイルの特徴をしっかり持ちつつも、飲みやすいビールばかりです。

 詳しい飲み方、飲み頃温度に関しては、ぜひとも「ヤッホーブルーイング」のホームページをご覧ください。

ヤッホーブルーイングのホームページはこちら

 なお、私も好んで飲んでいた ”TOKYO BLACK” は、2023年3月をもって製造を終了したとのことですが、ディスカウントストアなどでは、まだ在庫がある場合もありますので、お早めにどうぞ。

 ※”銀河高原ビール”について…地ビール創成期から「株式会社銀河高原ビール」が造り続けるブランドですが、2017年に同社が「株式会社ヤッホーブルーイング」の子会社となったことにより、ヤッホーブルーイングのオンラインショップから購入することができます。

 ※ ”よなよなエール” はペールエールですが、英国発祥のペールエールから発展したアメリカン・スタイルです。


お手軽に買える「エール」

本場の「エール」

ドラフトギネス

 黒ビールの象徴ともいえる ”ギネス スタウト” 。

  ”ポーター” の改良版
 アイルランド人のアーサー・ギネスが、イギリスで人気だった ”ポーター” を改良して発売し、のちに ”スタウト” として世界を席捲しました。

 日本の黒ビールは飲みやすい「ラガー」で造られていることが多いのですが、”スタウト” は「エール」。
 スッキリ派には抵抗感があるかもしれませんが、深い味わいはクセになります。
 少しぬるめの13℃前後で飲むのがおススメです。

ヒューガルデン ホワイト

 ”ベルジャン・ホワイト” といえば ヒューガルデン”。

 日本でもっとも有名なベルギービールなのではないでしょうか。

 小麦を使用したホワイトビールならではのフルーティーさと、オレンジピールやコリアンダーシードなどのスパイスが効いていて、ビールが得意でないという女性でも飲みやすいと評判です。

 副原料が多く使用されているため、日本の酒税法上では発泡酒扱いですが、世界的には立派なビールです。

 少し冷やした9℃前後で飲むのがおススメです。

日本の大手ビールメーカーが造る「エール」

サッポロ エビス プレミアムエール

 サッポロが発売している、エビスプレミアムエール”。

 私が今までで最も飲んだビールです。もし、この先、1銘柄しか飲んではいけない、と言われたら、迷わずこのビールを選びます。

 しっかりとした味わいや香りがあるにもかかわらず、スッキリ飲めて、冷やしてもよし、コスパよし、いくら飲んでも飲み飽きないエールです。

 詳しいスタイルは公表されていませんが、エールが初めてでも抵抗なく飲める優れものだと思います。
 

サントリー TOKYO CRAFT ペールエール

 大手が手掛ける「エール」の中で、商品名としてしっかり ”ペールエール” と名乗って定番化されているのは、これだけではないでしょうか。

 ”ペールエール” は、少しぬるめの温度で飲むと、香りや味わいをしっかり楽しむことができます。

 ”TOKYO CRAFT ペールエール” は、カスケードホップ” という柑橘系の香りがしっかりと出るホップを使用しており、爽やかな香りと後味の苦味が、ビール好きの喉を潤してくれます。

 ペールエールのグラスといえば ”パイントグラス”(写真のグラス)。
 パイントグラスでペールエールを飲めば、家飲みでも英国パブの気分を味わえますよ(笑)。

キリン スプリングバレー シルクエール

 ”スプリングバレー豊潤〈496〉” に続いて缶商品化された、キリン ”スプリングバレー” ブランドの定番商品。

 キリンのオンラインショップでは、定番商品以外の瓶商品や専用グラスも購入できます。

キリン 公式オンラインショップ はこちらから

  “豊潤〈496〉” は、エールのような濃厚さですが「ラガー」。一方の ”シルクエール” は、しっかり「小麦のエール」で、その味わいは折り紙つきです。

 「小麦のエール」は、ドイツのスタイル ”ヴァイツェン” や、ベルギービールの ”ベルジャン・ホワイト” で有名ですが、”銀河高原ビール” をはじめ、日本のメーカーも販売するようになり、気軽に楽しめるようになりましたね。

アサヒ スタウト

 アサヒが、まだサッポロと同じ会社(大日本麦酒)だった昭和10年(1935年)に発売された ”アサヒスタウト”。

 戦時中の製造中止を経て、GHQにより大日本麦酒が解体された直後の昭和27年(1952年)、 ”アサヒスタウト”は、アサヒの手によって復活しました。

 世界的にも抜群の評価を得ているこの商品は、ひとことでは言いあらわせない、深い味わいのスタウトです。

 初めてこのビールを飲んだ時、思わず「うまっ!」と叫んでしまいました。

 個人的な好みでいうなら、ギネスのスタウトより、断然こちらがおススメです。

オリオン 75ビールシリーズ

 オリオンが手掛ける ”75ビール” シリーズ。

 今回紹介する ”75ビールセゾン” は、限定醸造のため、いつまで購入できるかはわかりませんが、最近購入した私の感想は、「とりあえず、メチャクチャうまい!」。

 ここのところ(2023年6月現在)、立て続けに発売されている ”75ビール” シリーズは、”セゾン” 以外にも 、”クラフトラガー” や ”IPA” があり、どちらも非常に美味しいビールです。

 2022年夏限定の ”ベルジャンホワイト” も、とても美味しかったですよ。

 沖縄以外のスーパーでは、見かけたらラッキーなくらいの75ビール” シリーズですが、今後も注目したいブランドのひとつです。

日本のクラフトビールメーカーがつくる「エール」

 今回は、商品の詳しい紹介はやめておきますが、日本のクラフトビールメーカーがつくる「エール」も、レベルが高いものが多いです。

 今回の記事で紹介した「ヤッホーブルーイング」以外にも、スーパーやディスカウントストアで販売されている可能性のある範囲内で、おススメのメーカーを紹介します。
 ※地ビールメーカーとして創業した年代順に紹介します。会社そのものの創業順や、おススメの順位ではありません。

  • エチゴビール日本地ビールメーカー第1号の肩書きは伊達じゃない。日本のクラフトビール史は、エチゴビール抜きには語れない。 >>サイトはこちらから

  • 小西酒造1550年創業の老舗日本酒メーカー。クラフトビールのほか、輸入ビールも数多く取り扱っている。 >>サイトはこちらから

  • コエドブルワリー…「小京都」として有名な埼玉県川越市のメーカー。さつま芋のエール ”紅赤” は、お試しの価値あり。 >>サイトはこちらから

  • 伊勢角屋麦酒…非の打ち所がない ”ペールエール” は、見かけたら即買いレベル。創業者の名著『発酵野郎!』はビール好きの魂を揺さぶります。 >>サイトはこちらから

  • サンクトガーレン…創業者の岩本氏は、地ビール解禁前からサンフランシスコでビールを造り、日本に逆輸入。その様子がアメリカのメディアに取り上げられたことで、日本でも論争が起き、地ビール解禁のきっかけとなった。日本クラフトビールの歴史はサンクトガーレンから始まったといっても過言ではありません。世界的なビアコンテストで数々の賞を受賞するなど、クオリティの高さは折り紙つき。 >>サイトはこちらから

  • 箕面ビール…おさるのイラストロゴの可愛らしさをよそに、数々の世界的コンテストで賞をとった実力派。グッズも豊富でファンも多い。 >>サイトはこちらから

  • ベアレン醸造所…ドイツから伝統的な醸造器具を買い取って、クラシックなビールを造っている。ドイツビールにハマるきっかけになるかも。 >>サイトはこちらから

  • 常陸野ネストビール1823年創業の日本酒メーカー「木内酒造」が手掛けるクラフトビールブランド。可愛らしいフクロウのロゴが、ファンの心をかきたてる。 >>サイトはこちらから

  • DHCビール…化粧品・サプリメントで有名なDHCが手掛けるクラフトビール。もはや大手と言ってもいいほどの規模で展開している。 >>サイトはこちらから

 紹介したいクラフトビールメーカーは、まだまだたくさんありますが、キリがなくなるので、今回はこのへんで。

 次回も、”ビアスタイルを楽しむための基礎知識” をお送りしますので、ぜひご覧くださいね。

 では、今晩も素敵な家飲みを!

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